電子材料業界の「なぜ?」を読み解く
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電子材料徒然草

電子材料・PCB・半導体業界の「なぜ?」を読み解く

管理人 平賀 兼好 (ひらが ケンコウ)

電解銅箔と圧延銅箔の違いとは?

― なぜPCBでは、2種類の銅箔が使われるのか ―

プリント基板(PCB)で使われる銅箔には、大きく分けて電解銅箔(ED銅箔)圧延銅箔(RA銅箔)があります。どちらも「薄い銅」ですが、作り方が違うため、結晶構造や機械的特性、得意な用途が変わります。この記事では、その違いを「なぜ?」から読み解きます。

1.一言でいうと、作り方が違う

電解銅箔(ED)

電気化学的に銅を析出させて作る。

銅イオンを含む電解液から、回転するドラムなどの表面に銅を析出させ、連続的に箔として取り出します。

圧延銅箔(RA)

銅材をローラーで圧延して薄くする。

銅の板材などを何度も圧延し、必要な厚さまで薄くしていきます。途中で焼鈍などを行い、材料の状態を調整します。

2.同じ銅なのに、なぜ性質が変わる?

ポイントは銅の結晶組織です。

金属は、原子が規則正しく並んだ小さな結晶の集合体です。銅箔は「銅なら全部同じ」というわけではなく、どのような工程で作ったかによって結晶の形や向き、欠陥の状態などが変わります。

そのため、電解銅箔と圧延銅箔では、同じ銅でも強度・伸び・曲げ耐性・電気的特性などに違いが生まれます。

3.圧延銅箔がFPCで活躍する理由

圧延銅箔は、圧延によって生じる組織上の特徴から、用途によって耐屈曲性を活かせることがあります。

代表的なのがFPC(フレキシブルプリント基板)です。スマートフォンや小型電子機器などでは、基板を曲げたり、狭い場所に折り曲げて配置したりする場合があります。

こうした用途では、単純な導電性だけではなく、「曲げたときに銅箔がどれだけ耐えられるか」が重要になります。

4.では、なぜ全部を圧延銅箔にしないのか?

ここが今回の「なぜ?」です。

圧延銅箔は優れた特徴を持っていますが、銅材を繰り返し圧延して薄くするため、薄箔を安定して量産するには高度な設備・加工技術が必要です。

一方、電解銅箔は連続的な電解析出によって製造でき、PCB市場で非常に幅広く使われています。さらに、添加剤や表面処理などを工夫することで、用途に合わせた性能設計も行われています。

つまり、

「どちらが優れているか」ではなく、
「どの用途に、どちらの特性が必要か」

という考え方が基本になります。

5.9μm、5μm……薄くなるほど難しくなる

PCBの高密度化に伴い、銅箔の薄型化が重要になるケースがあります。18μm、12μm、9μm、さらにそれ以下というように、薄い銅箔が求められることがあります。

しかし、薄くすればよいわけではありません。薄箔になるほど、破れ・シワ・搬送・寸法安定性・表面状態・加工時のハンドリングなどの管理が難しくなります。

特に圧延銅箔では、非常に薄い箔を均一な品質で安定して作ることそのものが技術課題になります。

6.AIサーバー時代には、銅箔の「表面」も重要になる

ここからは、銅箔の話がAIサーバーや高速通信につながってきます。

AIサーバーなどで扱うデータ量が増えると、PCBには高速な信号を安定して伝えることが求められます。その際には、銅箔の厚さだけでなく表面粗さなども重要な設計要素になります。

高速信号用途では、表面状態を考慮した銅箔としてHVLP(Very Low Profile)系の銅箔などが注目されます。

つまり、

AIサーバー高速・高密度PCB高性能CCL高性能銅箔

というつながりを見ると、AI市場の拡大が電子材料市場に影響する理由が見えてきます。

7.電解銅箔と圧延銅箔の違いを整理

項目電解銅箔(ED)圧延銅箔(RA)
主な製造方法電解析出圧延
代表的な特徴幅広いPCB用途に対応しやすい用途によって耐屈曲性などを活かせる
主な用途例一般PCB、高多層PCB、高速伝送向けなどFPCなどのフレキシブル用途など
薄箔化高度な析出・表面処理技術が必要高度な圧延・焼鈍・ハンドリング技術が必要
価格厚さ・幅・表面処理・強度などの仕様、数量、メーカーによって大きく変わるため、一概に比較できない
平賀兼好の徒然メモ
銅箔は、一見すると「薄い銅のシート」にしか見えません。しかし、作り方を掘り下げると、結晶組織、強度、伸び、表面状態、そして高速伝送まで話がつながります。電子材料の世界では、「何でできているか」だけでなく、「どう作られたか」まで見ると、材料の本質が少し見えてきます。

まとめ

電解銅箔と圧延銅箔は、どちらもPCBに欠かせない重要な銅箔です。